展覧会別 知っておきたい用語
印象派展、日本美術展、現代美術展、工芸展など、展覧会の種類ごとに知っておきたい美術用語をまとめました。行く前の予習にどうぞ。
印象派展
モネやルノワールなど、光と色の移ろいを描いた画家たちの展覧会。前後の時代とのつながりを知ると、展示の流れがよく見えます。
- 印象派いんしょうは
移ろう光や大気の一瞬の印象を、明るい色彩と素早い筆づかいでとらえようとした19世紀の画家たち。
- 写実主義しゃじつしゅぎ
理想化せずに、現実のありのままの姿を描こうとする態度や運動。
印象派の直前の動き。章立ての最初によく登場します。
- ポスト印象派ぽすといんしょうは
印象派の後に、それぞれ独自の方法で新しい絵画を切りひらいた画家たちの総称。
- ジャポニスムじゃぽにすむ
19世紀後半のヨーロッパで起こった、日本の美術や工芸への関心と、その影響。
浮世絵との比較展示がある展覧会では必ず出てきます。
- 風景画ふうけいが
山や海、田園、都市など、自然や景色を主な題材にした絵画。
- 筆致ひっち
画面に残された筆の運びや跡。描き手の個性が表れる部分。
- 補色ほしょく
色相環で正反対の位置にあり、並べると互いを引き立て合う色の組み合わせ。
- 油彩ゆさい
顔料を油で練った絵具(油絵具)を使って描く絵画、またはその技法。
西洋古典絵画展
ルネサンスからバロック、新古典主義まで、ヨーロッパの美術館コレクションを紹介する展覧会。描かれた物語や象徴を読み解く言葉が役立ちます。
- ルネサンスるねさんす
古代ギリシャ・ローマの文化を手本に、人間や自然を探究した14〜16世紀ごろのヨーロッパの文化運動。
- バロックばろっく
劇的な明暗や動きのある構図が特徴の、17世紀ごろのヨーロッパ美術の様式。
- 新古典主義しんこてんしゅぎ
古代ギリシャ・ローマの美術を理想とし、均整のとれた端正な表現を目指した18世紀後半〜19世紀初めの様式。
- ロマン主義ろまんしゅぎ
理性よりも感情や想像力、個人の内面を重視した18世紀末〜19世紀の芸術の動向。
- 歴史画れきしが
歴史上の出来事や神話、聖書、文学の物語の場面を描いた絵画。
かつて最も格の高いジャンルとされた絵画です。
- 図像学ずぞうがく
作品に描かれた人物や物、しぐさが何を意味しているかを読み解く研究方法。
- 寓意ぐうい
愛や正義、時間などの抽象的な概念を、人物や物語の姿に置き換えて表すこと。
- ヴァニタスゔぁにたす
人生のはかなさや死の必然を思い起こさせる静物画、またはその主題。
静物画の髑髏や砂時計の意味がわかります。
- キアロスクーロきあろすくーろ
光と影の対比によって、立体感や劇的な効果を表す絵画の技法。
- 遠近法えんきんほう
平らな画面の上に、奥行きや距離感を表すための描き方。
- テンペラてんぺら
卵などを接着剤として顔料を練った絵具、またはそれで描く技法。
- フレスコふれすこ
塗ったばかりの湿った漆喰の壁に、水で溶いた顔料で描く壁画技法。
日本美術・浮世絵展
浮世絵や近代の日本画・洋画を紹介する展覧会。技法や画材の違いを知ると、作品のキャプションがぐっと読みやすくなります。
- 浮世絵うきよえ
江戸時代に発展した、町人の暮らしや流行、風景などを描いた絵画・版画。
- 木版画もくはんが
木の板を彫って版を作り、出っ張った部分にインクをつけて刷る版画。
- 版画はんが
版を作り、インクを紙などに写し取って作る作品、またはその技法。
- エディションえでぃしょん
版画や写真、彫刻などで、同じ作品を何点制作するかを定めた数や、その番号。
- 日本画にほんが
岩絵具や墨、膠などの伝統的な画材を使い、日本の絵画の伝統に基づいて描かれる絵画。
洋画と対になる言葉。明治以降の展覧会で頻出します。
- 洋画ようが
油彩など西洋から伝わった技法や画材で、日本の画家が描いた絵画。
- 顔料がんりょう
水や油に溶けない色の粉。絵具の色のもとになる。
- 余白よはく
画面の中で、何も描かれていない部分。表現の一部として積極的に生かされることもある。
- 風俗画ふうぞくが
人々の日常生活や、身近な暮らしの場面を描いた絵画。
- ジャポニスムじゃぽにすむ
19世紀後半のヨーロッパで起こった、日本の美術や工芸への関心と、その影響。
20世紀美術・近代美術展
キュビスムやシュルレアリスムなど、20世紀前半の「〇〇イズム」が次々と登場する展覧会。運動の名前と技法をセットで押さえましょう。
- モダニズムもだにずむ
伝統から離れ、新しい時代にふさわしい表現を追い求めた近代の芸術の考え方。
- アヴァンギャルドあゔぁんぎゃるど
既存の芸術の常識を打ち破り、新しい表現を切りひらこうとする先駆的な芸術や運動。
- フォーヴィスムふぉーゔぃすむ
現実の色にとらわれず、強烈で鮮やかな色彩を自由に使った20世紀初めの絵画の動向。
- 表現主義ひょうげんしゅぎ
目に見える姿よりも、作家の内面の感情や精神を強く表そうとする表現。
- キュビスムきゅびすむ
物をさまざまな角度から見た形を、一つの画面の中に組み合わせて描いた20世紀初めの美術の動向。
- 未来派みらいは
機械や速度、都市のエネルギーを称賛した、20世紀初めのイタリアの芸術運動。
- ダダだだ
第一次世界大戦中に生まれた、既成の芸術や価値観を否定した芸術運動。
- シュルレアリスムしゅるれありすむ
夢や無意識の世界を表現しようとした、20世紀の芸術運動。
- 抽象ちゅうしょう
現実の物の姿をそのまま描かず、色や形、線などで表現すること。
- コラージュこらーじゅ
紙や写真、布などを画面に貼り付けて作る表現技法。
- フロッタージュふろったーじゅ
凹凸のある物の上に紙を置き、鉛筆などでこすって模様を写し取る技法。
シュルレアリスムの展示でよく見かける技法です。
- レディメイドれでぃめいど
既製品をそのまま、またはほとんど手を加えずに作品として示す方法。
現代美術展・国際芸術祭
インスタレーションや映像作品が並ぶ展覧会や、ビエンナーレなどの芸術祭。作品の形式と、その背景にある考え方を表す言葉を集めました。
- コンテンポラリーアートこんてんぽらりーあーと
いまの時代に生きる作家による、同時代の美術のこと。
- インスタレーションいんすたれーしょん
物や映像、音、光などを空間に配置し、その空間全体を作品として体験させる表現。
- サイトスペシフィックさいとすぺしふぃっく
特定の場所のために制作され、その場所と切り離せない作品のあり方。
- ビデオアートびでおあーと
ビデオや映像を表現の手段として用いた美術作品。
- パフォーマンス・アートぱふぉーまんすあーと
作家などの身体による行為そのものを作品とする表現。
- コンセプチュアル・アートこんせぷちゅあるあーと
見た目の美しさや技術よりも、作品の背後にある考え(コンセプト)を重視する美術。
- 参加型アートさんかがたあーと
鑑賞者や地域の人々が制作や体験に参加することで成り立つ作品。
- 関係性の美学かんけいせいのびがく
物としての作品よりも、作品を通じて生まれる人と人との関係や出会いを重視する考え方。
- ビエンナーレびえんなーれ
2年に1度開かれる大規模な国際美術展。3年に1度のものはトリエンナーレと呼ばれる。
国際芸術祭のことを指す場合が多い言葉です。
- アートプロジェクトあーとぷろじぇくと
美術館の外で、地域や社会と関わりながら一定期間にわたって行われる芸術活動。
- ミクストメディアみくすとめでぃあ
複数の異なる素材や技法を組み合わせて作られた作品のこと。
- 無題むだい
作品にタイトルを付けないこと、またはタイトルとして「無題」と付けること。
戦後日本の前衛美術展
具体やもの派など、戦後の日本で生まれた前衛的な動きを紹介する展覧会。海外の同時代の動きと並べて見ると理解が深まります。
- 具体美術協会ぐたいびじゅつきょうかい
1954年に関西で結成された、戦後日本を代表する前衛美術のグループ。
- もの派ものは
石や木、紙などの素材をほとんど加工せずに置き、物と空間の関係を示した1960年代末〜70年代の日本の美術の動向。
- アヴァンギャルドあゔぁんぎゃるど
既存の芸術の常識を打ち破り、新しい表現を切りひらこうとする先駆的な芸術や運動。
- ハプニングはぷにんぐ
観客を巻き込みながら一回限りで行われる、即興的な出来事としての作品。
- フルクサスふるくさす
1960年代に国際的に展開した、芸術と日常の境界をなくそうとした芸術運動。
- 抽象表現主義ちゅうしょうひょうげんしゅぎ
1940〜50年代のアメリカで展開した、大画面の抽象絵画の動向。
- ファウンド・オブジェクトふぁうんどおぶじぇくと
作家が見つけたり拾ったりした既存の物を、作品の素材や作品そのものとして用いること。
- 身体性しんたいせい
作品の制作や鑑賞において、体の動きや感覚が重要な役割を果たしていること。
工芸・デザイン展
陶芸や漆、染織から、ポスターや家具などのデザインまで。生活と美術のつながりを扱う展覧会で出会う言葉です。
- 工芸こうげい
陶磁、漆、染織、金工、木工など、素材と技術を生かして作られる器物やその表現。
- 陶芸とうげい
粘土などを成形し、窯で焼いて器や作品を作る工芸、またはその作品。
- 漆芸しつげい
ウルシの木の樹液である漆を塗り重ねて作る工芸、またはその作品。
- 染色せんしょく
布や糸に染料で色をつけ、模様を表す技法。
- テキスタイルてきすたいる
布や織物、糸などの繊維に関わる素材や表現のこと。
- 民藝みんげい
名もない職人が作った日常の道具に美しさを見いだそうとした考え方と運動。
アーツ・アンド・クラフツ運動と比べて紹介されることがあります。
- アーツ・アンド・クラフツ運動あーつあんどくらふつうんどう
19世紀後半のイギリスで、手仕事の価値と生活の美を取り戻そうとした運動。
- アール・ヌーヴォーあーるぬーゔぉー
植物のような曲線を特徴とする、19世紀末〜20世紀初めのヨーロッパの装飾様式。
- アール・デコあーるでこ
直線や幾何学的な形を特徴とする、1920〜30年代に流行した装飾様式。
- バウハウスばうはうす
1919年にドイツで設立された、美術・工芸・建築を総合的に教えた造形学校。
- グラフィックデザインぐらふぃっくでざいん
文字や図、写真などを組み合わせて、情報やイメージを視覚的に伝えるデザイン。
版画・ポップアート展
版画作品や、ウォーホルに代表されるポップアートの展覧会。刷りの技法やエディション番号の意味を知っておくと楽しめます。
- 版画はんが
版を作り、インクを紙などに写し取って作る作品、またはその技法。
- エディションえでぃしょん
版画や写真、彫刻などで、同じ作品を何点制作するかを定めた数や、その番号。
作品横の「12/50」といった数字の意味です。
- シルクスクリーンしるくすくりーん
網目状のスクリーンを通してインクを刷る版画技法。
- リトグラフりとぐらふ
水と油が反発し合う性質を利用して、平らな版から刷る版画技法。
- エッチングえっちんぐ
金属の版を酸で腐食させて溝を作り、そこに詰めたインクを刷る版画技法。
- ポップアートぽっぷあーと
広告や漫画、商品など、大衆文化のイメージを取り入れた美術。
- アプロプリエーションあぷろぷりえーしょん
既存の作品や画像、イメージを借用し、新しい文脈で作品として示す手法。
- フォトモンタージュふぉともんたーじゅ
複数の写真を切り貼りしたり、組み合わせたりして一つの画面を作る技法。
- キッチュきっちゅ
大衆向けで、通俗的・感傷的とされる物や表現。美術ではそれを意図的に取り入れることもある。
作家の回顧展
ひとりの作家の生涯の仕事をたどる展覧会。作風の変化を追うときや、図録・キャプションを読むときに役立つ言葉です。
- 回顧展かいこてん
一人の作家の初期から晩年までの作品を集め、その歩みをたどる展覧会。
- キュレーターきゅれーたー
展覧会を企画し、作品の選定や展示の構成を考える専門家。
- 図録ずろく
展覧会にあわせて刊行される、出品作品の図版と解説をまとめた本。
- キャプションきゃぷしょん
展示作品のそばに掲示される、作品名や作者、素材などの情報を記した札。
- ドローイングどろーいんぐ
主に線を用いて描かれた作品。鉛筆や木炭、ペンなどで描くものが多い。
完成作の前段階として展示されることが多い作品です。
- モチーフもちーふ
作品の中で描かれたり、表現のきっかけになったりしている具体的な物や形。
- 主題しゅだい
作品が表そうとしている中心的な内容やテーマ。
- マチエールまちえーる
作品の表面の質感や、素材がつくり出す手ざわりの感じのこと。
- 文脈ぶんみゃく
作品の意味を左右する、作品をとりまく背景や状況のこと。